レンアイゴッコ(仮)
「(我慢我慢我慢……耐えろ、俺……)」
大きな深呼吸を繰り返し、心の中で修行僧になる。
「スーツ、シワになるから起きろ」
「んー……」
煩わしそうに身体を動かした妃立はかんなから手を離し、俺へ手を伸ばす。
「脱がせて?」
積み上げられていた理性、という名前の塔がガラガラと崩れていく気がした。代わりに熱が溜まるのを感じる。
ベッドに乗り上げ妃立の身体を組み敷いた。目を瞑ったまま、手を広げる彼女は脱がせてと言わんばかりなので片方の袖を引き、背中に腕を回し脱がそうとした。けれど、まあ上手くいくわけはなく、体勢を崩してしまいあっという間にベッドに押し倒す形になった。
「ふふ、あったかぁ……」
妃立の吐息が耳元に触れる。ああ、熱い。シャンプーか香水か、俺のベッドの中には妃立の香りが漂っており、熱さで理性はさらに溶けていった。
耳元や頬に口付けながら完全にジャケットを脱がせた。
最後までやっちゃえと悪魔が囁く。……でも、俺は全身の力を脱力させて、妃立の身体に覆いかぶさった。
「(……無理だ……)」
もしもまた嫌われてしまったら、俺はもう立ち直れない。