レンアイゴッコ(仮)
「じゃあ、シノちゃんは今幸せ絶頂期なわけか」

「そういうわけじゃ……」

「謙虚すぎるんだよ、モテる男の謙虚は嫌味だからなおまえら」

「なんで俺も巻き込んだ??」

不可解さを見せる藤と、持て囃す莇に、訳あって好き同士じゃないと。それでも、近くにいれれば幸せだと話せば、「やきもち妬いてくれたら本命じゃねーの?」と、藤がアドバイスに満たない言葉をプラスさせた。

「……やきもち?」

「ほら、他の女の子と親しくするとか」

親しく、妃立以外の女と?声帯も使うのが無駄だと思うのに?

思いが顔に出たのか「露骨に嫌な顔するなよ」と藤は溜息を吐き出し「カンナの事になると表情豊かだな」莇も笑う。

でも、やきもちなんか、貰っても嬉しくない。

悲しませたくない。

『東雲といると、楽』

妃立が俺に求めているのは手軽さ、安楽、心地良さ。……凪。

そこに俺がもしも好きだと言えば、この関係に波紋を落とせば、今以上に困らせてしまう。

距離を置かれてしまう。


この関係が解消されてしまう。




「(……そんなのは嫌だ)」



その場しのぎの恋愛ごっこ、始めたのは俺だから、彼女には何も伝わらなくていい。好きな人が出来たなら、また、ちゃんと見守るから、手放すから、諦めるから。


そばに居れるなら、それだけでいい。


六話・NO kidding!!終
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