レンアイゴッコ(仮)
東雲の方へ近寄る。マットレスが沈み、シーツが擦れる。

東雲が昨日そうしたように、頭をよしよしと撫で耳環をなぞり、頬に触れると、薄いくちびるをふにふにと摘んだ。

あの時、東雲の友達……莇さんからの着信が無ければ、キス、してたのかな。

恋愛の流れはどちらから落ちてくるかわからない。私の進行方向に流れることもあれば、真逆だったりもある。

その流れはとても強力で、ひとたび乗ってしまえば何処までも流されてしまう。どんなに強い心を持っていても、逆らうことは難しい。

キスからの流れで、東雲とそのまま、シてた?

昔は考えられなかったこと。今ではぼんやりと輪郭を持つもの。

──……東雲はどんなキス、するんだろ。

考えると、身体に熱が生まれる。

キスだけじゃない。この綺麗な指先はどんな風に身体に触れて、綺麗な表情を歪め、どんな甘い言葉を囁いて、冷たいこの手を熱くさせるのだろう。

頭の中のほとんどを東雲のことで埋めつくしていると、突然その目がパチリと開いた。あわてて手を引っこめる。

「……はよ」

東雲はこの状況に驚かないらしい。

やっぱり、魅力がないのね。

「おはよう」

どうやら私は女に見られなくなるらしいから、こんなの慣れてるけどさ。
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