レンアイゴッコ(仮)
「…………何時?」

掠れた声が色っぽくて、朝からこの声は耳に悪い。

耳に悪くても、いちいちときめいても、ドキドキしているのは私だけ。

「7時くらい。ごめんね?いつの間にかベッドで寝てたみたい」

「別いいよ。眠れた?」

「うん、おかげさまで。東雲は?」

「まあまあ」

歯切れの悪い返事だけど、クマも消えているし、寝不足が少しでも解消されたなら良かった。

上体を起こしてうんと伸びをする。

──「忘れてた」

と、その時、昨日東雲がお風呂から上がって言うつもりだったお強請りを思い出した。

「……なにが?」

「昨日の分の五秒!」

同じように上体を起こした東雲へ向かって大きく手を広げる。

虚しくても、これに効果はなくても。

いつか、仲直りのきっかけになったあれはいつの間にか会えば決まりのようになっていた。

「ああ、成程」

どうやら、東雲にも伝わったらしい。

東雲が踏み込む。マットレスが沈む。脇から腕を入れ、背中を支えるように丁寧に抱き締める。

3、4、5、…………6?

いつもきっちり終わるのに、なぜ続くのか。

「……ねえ、長くない?」

「五日分」

東雲が欲張るのは珍しい。
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