レンアイゴッコ(仮)
「鈴木、ご飯抜いてるって言ってたでしょ。無理してたんじゃないの?」

「やー……無理とかじゃ……」

歯切れの悪い返事を貰う。目に見えて悪いってわかるのに、はっきりしないのが私を苛立たせる。

「そんな顔色して、期間内に終わらないんだったら仕事も任せられない。体調管理くらい、自分でしてくれないと困るよ?」

と、その時、鈴木の表情が沈むのを見た。叱りすぎたという意識はなかった。

「すみませ……腹、いた……」

突然だった。顔面蒼白でお腹を抑え、蹲る鈴木はどう見ても演技じゃない。尋常でもない。

「鈴木、どうしたの!?」

思わず声を荒らげる。オフィスに響く私の声。

どうしよう、どうしたらいいんだろ……!

なんの知識もなく、ただ鈴木の丸まった背中を慌てふためきながら摩っていれば、突然、嗅ぎなれた香りがした。

「……鈴木、立てる?」

私の声をいち早く拾ったのは東雲だった。

落ち着いた声を聞くとどこか安心する。

「な……なんとか」

「とりあえず医務室行こう」

「東雲、私が付いてく」

「妃立、おまえ納期迫ってるだろ。必要なら病院まで俺が付き添うから、仕事に戻れ」

鈴木の肩を担ぐ東雲の姿に周囲の視線も当たり前に集中する。

「……東雲は大丈夫なの?」

「平気だから言ってる。じゃあ」

そう言い残して、東雲は鈴木を連れて行った。
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