レンアイゴッコ(仮)
そうなることが分かって目を閉じた。引き合うように唇が触れる。柔らかい温もりに切なくなる。一秒、二秒……五秒で一度、目を開けた。長いまつ毛がしっかりとこちらを見つめている。

「ごめん」

ポツン、と東雲が零した。何がごめんなのか分からないまま、再びごめんと言いながら離れた唇は、寂しさを埋めるようにまた重なり合う。

角度を変え何度も口付けを交わしていると、こちりとぶつかった額。鼻先が触れる距離に思わず息を潜めた。

「……ち、近くない?」

「いいじゃん」

「よ……くないよ」

「なにも悪いことしてねえよ」

そう言って東雲は私の髪の毛を耳に掛けると、うなじを手で引き寄せら再びくちびるに触れた。

──……それはそうだけど。

悪いことじゃないし、恋人同士として当たり前のことだけど。

こんなにも大切に丁寧に、宝物にでも触れるように口付けをされたら、どれだけ鈍くてもうぬぼれてしまう。

目を開ける。故意なのか自然なのか判断は付かない。東雲の眼差しひとつとっても柔らかくて。その仕草、ひとつひとつに心臓が音を立てた。

「(……どうしてそんな顔、するの)」

目が合うと、その瞳がゆるゆると嬉しそうに細められて表情が蕩けていく。

「なあ、俺、自惚れてもいい?」

「……自惚れ?」

それはこっちのセリフで、東雲が、どうして?
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