レンアイゴッコ(仮)
「(なんで泊まってくれなかったんだろ……)」

思い出してはふにふにと唇を摘み、ちょっと拗ねてみる。

仕事なら家ですればいいのに……。

東雲用のパソコンを買う?そうする?

東雲だって、私に貢いでくれたからちょっとくらい私も貢いで良いよね……?

「おはよう〜。今日、早いわね」

「おはようございます。ちょっと、気になることがあって」

「へえ、熱心ね〜」

仕事の資料を確認しながら悶々と悩んでいると、坂下先輩が出社し前列のデスクにトートバッグを下ろした。

「……て、あらあら?今日東雲は遅いのね」

「ですねー……」

そう。いつも私よりも前に出社しているはずの東雲がいないのだ。

「ねえ、坂下先輩」

「んー?どうした」

「坂下先輩って昔、飲み会の時武勇伝語ってたじゃないですか。超モテてたって話」

「やめて。朝から古傷抉るな」

「告白の成功率99パーセントだって。唯一、振られたのが今の旦那さんだって」

「抉るなって言ってるでしょ」

「どんな風に告白してたんですか?」

「例えば、飲み会帰りに二人になるでしょ?気になる人の家の近くで、もう歩けないって言って家に上がり込むでしょ?そしたらこっちのもんよ」

「(なにがこっちのもの?)」

坂下先輩の熱弁に圧倒されてしまう。それに、東雲に家で二人きりになっても、恋愛フラグどころか些細な間違いも起きなかったこの五年。実るどころかそろそろ腐りそうだ。
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