レンアイゴッコ(仮)
そもそも東雲には好きな人がいて、私の告白なんて最初から砕けるのが決まっている。

ずうううんとなにか重たいものを胃付近に感じながらも東雲へと視線を送る。東雲も同じタイミングでこちらを見た。おかげで目が合う。今目が合うのは良くないから視線を逸らす。やっぱり気になって、もう一度見る。また視線が絡む。堂々巡りだ。

結局、好きなのだ。

「妃立さん、風邪ですか?顔赤いですよ」

「……えっ、あ、暑いだけだよ!」

「ああ、確かに暖房効きすぎてますよね〜」

「そうそう。……あ、私、会議室の準備するね」

宮尾ちゃんに顔の紅潮を指摘されたから、パタパタと頬を仰ぎ会議室へ向かった。

空調を効かせ、ブラインドを下ろしていると突然誰かが会議室へやってきた。東雲だった。

「まだ、会議室は準備中だよ」

「熱?」

「え?ううん、違……」

否定よりも先に、東雲は、こつんと額をぶつける。

「……っ!」

至近距離に現れたその顔に驚くのは必然で。みるみる頬に熱が集中するのが分かった。

「……え?本当に顔赤いけど、大丈夫か」

「……し、東雲のせいだ!」

「はあ?」

こんな風に、いちいち仕草にドキドキするのなんて、あとにも先にも東雲だけにしてくれないと、私の心臓が持ちそうにない。
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