レンアイゴッコ(仮)
東雲は朝食をコーヒーで済ませる男だ。そんなのは重々承知している。

「どうぞ」

けれど、今日は珍しく、私にも淹れてくれたらしい。

ぼんやりとした頭で神経を起動させる。

「ありがとー……ミルクは?」

「五個」

コーヒーフレッシュ五個。これは甘やかしの分量である。

「ふふ、ありがとー……」

ふあ、と欠伸を噛んで、マグカップに口をつけた。

そして東雲を流し目を向けた。これはトップシークレットなのだけど、東雲は朝、眼鏡だ。厳密に言うと寝る直前も眼鏡なのだけど、この眼鏡というのがミソだ。昼間のコンタクトでは得られない養分がある。

細い丸眼鏡姿、イズ、可愛い。

しかし、今日はその可愛い顔に、異変を見つけてしまう。

「待って、ねえ、どうしたのそのクマ。イケメンが更にイケメンになってるよ?」

「うるせえ」

「きゃー、こわいこわい。朝から東雲くんは怖いですねえ」


けたけたと笑っていれば、東雲は「誰のせいだと……」と、無機質な表情で、硬いため息を吐き出した。
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