レンアイゴッコ(仮)
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18時、終業の時刻だけど仕事が残っていたので、30分だけ残業をした。残業時間月20時間を謳う弊社。今のところ、今月の残業時間もクリアできそうだ。
私はクリア出来そうだけど、東雲は仕事を家に持ち帰っているという。
「(自分の許容外の仕事を安請け合いするからだ……)」
けれども、東雲はそういう男だ。
「(……でも、東雲がそうなったの、いつからだっけ……?)」
記憶を掘り返してみた。入社した当時の東雲は定時で上がる男だったような気がする。今では同期の中でも頭一つ成果を上げているため、一番に昇進する男だと囁かれている。
過労で体調を崩し入院した社員が出たのが、私たちが入社した前年だと坂下先輩から聞いた。創立10周年という節目の年に、今まで見て見ぬふりをされてきた時間外労働に社長がメスを入れたのだ。
しかし、すぐには改善されるはずが無かった。従業員数約500名という企業の社長が全ての部署を自分の目で確認するなんて無理な話だ。
積み重ねられてきたであろう暗黙のルールによって、勤務時間後の労働も揉み消されてきた。
二年前、ウェブディレクターとして仕事を任せられるようになった私は、自分の許容量が分からずいくつも掛け持ちをして、残業を繰り返した結果倒れた。