レンアイゴッコ(仮)
「(……甘い……)」

東雲は、飴でも食べていたのだろうか、その口内は甘さで満たされていた。

何味だっけ、桃?リンゴ?

温かく柔らかい感触が唇に押し付けられるのを実感しながら、東雲の口に残された僅かな味を確かめる。

けれども、実際はそんな余裕なんてない。

何度も角度を変えて求められる口づけを受け入れながら、東雲の両肩をしっかり掴んだ。捕まっておかないと今にも押し倒されそうな勢いなのだ。

たとえるなら、そう、小さな子供がお母さんに、遊んでと抱き付きにいく感覚。

前回、勢い余って押し倒された。

東雲が踏みとどまったから良かったものの、今度組み敷かれてしまえば、私に、解く余裕はない。

「(なんで)」

なんで東雲には、好きな人が、いるのかなあ……。

「……ごはん、冷めちゃう」

「冷めても美味しいよ」

「そうじゃなくて……」

「分かった。今は我慢する」

今はって……!

渋々と言ったように東雲は立ち上がると、私を手を引いて立ち上がらせた。腰から下に力が入らず、キッチンにもたれ掛かって休憩した。

東雲のキス、攻撃力♾。

「大丈夫?」

それに気付いたのか、東雲はほくそ笑む。
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