レンアイゴッコ(仮)
ちょっとだけ、イラッとしたので、先程のお望み通り東雲には少々傷のあるオムライスを提供する。ただし、ホワイトソースを周りに注いだのち、ケチャップで“こはくおつかれ”とかいてあげた。でっかくハートをくっ付けて。字は辛うじて読める程度の、へたくそなデコレーション。

「うわー……美味そう」

オムライスとサラダ、スープと食卓に並べる。共に楽しむお酒はワイン。

「でしょ?今なら熱々のと交換できるけど、どうかな〜?」

「遠慮する。それより、写真撮っていい?」

「……は?」

嫌がらせのつもりだったのに、東雲は何枚も写真を撮ってしまうから、こんなの、逆に私への嫌がらせともとれる。やっぱり、何枚も東雲の方が上手。


「ねえ、今日も帰っちゃう?」


ご飯を食べ終わると、前回と同様、東雲はお皿洗いを張り切ってくれた。雑に捲られた袖口から覗く二の腕が逞しくて、胸がきゅんとする。

そして、さっきの仕返しのごとく背後から覗き込むと、東雲は「あー……」と、視線を上に向けた。

「つか、泊まるっつっても服無いよな」

正論で殴られ、黙る。確かに、私の家に東雲の衣服はない。

「あ、待って」

でも、そうだ。私と東雲の服は無くても、男物の服はあるのだ。クローゼットにねむるそれを見つけ出すと、ピカーっと光明が差し込んだ。

「あった!ねえ、弟ので良ければあるよ」

「弟に悪い」

「悪く思うような弟じゃないから平気。ね、いいでしょ?」

こてん、と首を傾げた。
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