レンアイゴッコ(仮)
ふらふら〜……っと、東雲の視線が泳いだ。そう、水なんてないのに、泳いだのだ。

あとひと押しだ。

もちろん明日も仕事だから会えるのだけど、仕事中は仕事に専念したい。

ドキドキと変に高揚していると、東雲は小さなため息を吐き出した。答えだと思った。

「(無理かあ……)」

東雲は蛇口のセンサーに手をかざして水を止めると、雑に手を拭いて私の頬を抓った。東雲の目は、何かを諦めている。

「……にゃ、にゃに?」

ふにゃふにゃの声が逃げていくと、パッと手を離された。

「……コンビニで下着買ってくるわ」

「お泊まり、してくれるの!?」

まさかのOKに身を乗り出す。東雲がビシッと私に向かって人差し指を向ける。

「誘ったの、妃立の方な」

「そうだけど……」

「意味わかってんの?」

「……分かってるよ?」

と言っても、東雲の家に泊まっても何一つ恋愛イベントが起きない私と東雲だから、予感めいてよいものか。東雲はスマホだけを手に出て行こうとするので追いかける。

「私もついてくよ」

「その前に風呂入ってたら」

「あ、そうだね。そうする。気をつけてね!」

「ん。なんか食う?」

「んー……アイスとか?」

「了」

何気ない話で東雲を見送った。
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