レンアイゴッコ(仮)
不眠の原因が私なんて、酷い言いがかりだ。

「私、何かした?」

けれど、東雲相手に感情を荒立てるのも不本意だ。甘やかしコーヒーも美味しいし、出来ればこのまま気持ちの良い朝を迎えたい。

「お前のいびきがうるさくて眠れなかったんだよ」

しかし、困ったものだ。東雲は容易く私の感情を逆撫でする。

「はい?私いびきなんてかいたことないよ!?」

「酒飲んで寝た時はもう酷い酷い」

東雲の遠い目が痛々しい。

そうなの!?……そうなの……!?

「ねえ、私に原因なんてないと思ってたけど、まさか夜中のいびきが引き金になったのかな、そうなのかな!?」

これじゃあ、いくら聞き分けのいいお利口を作っていても、嫁の貰い手なんて無いんじゃないか。

まるで真空に吸い込まれていくような衝撃を受けていれば、東雲は口元にニヒルな笑みを浮かべた。

「ウソだよ」

「なによー……もう、心配して損した……」

「つかいびき一つで別れるような男、こっちから振ってやれ」


東雲はそう言って眼鏡を外した。眼鏡タイムは終わりらしい。
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