レンアイゴッコ(仮)
「(……ちょっと強引すぎたかな……?)」

脳内のBGMは恋のうた。可愛い歌詞を無限に流しながら自分を励ます。

いつもより入念に体を洗って、それからパジャマに身を包んだ。

ふと、気づく。ここから先は可能性の話だ。

「(もしも)」

──……もしも東雲に抱かれたら?

セックスする前は正爾との関係は良好だった。その後徐々に仕事が忙しいからと会えなくなって……最終的に浮気。

思い返しても、私の性事情はかなり悲惨だ。

正爾の前の彼氏は自分本位な抱き方をする人で、痛くてあまり気持ちよくなかった。早く終わって欲しいとばかり思ってた。その前の人は大きすぎて激痛。

そもそも原点に近い場所に、アフターポルノ事件がある。性経験に、ずいぶん運のない人生を送っているらしい。

東雲ともし、してしまえば、セフレみたいな関係になるのかな。

私にとって東雲は一人しかいないけれど、東雲にとっては誰かの代わり。

「(……むなしい)」

割り切る?器用なことは出来ない。

ああ、そうだ。私に無いものは覚悟。

好きな人がいる人を好きになる覚悟。

浅はかな自分に気付く。

「どうしよ……」

バスルームの洗面台に手を付き、よろよろとしゃがみ込んだ。
< 190 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop