レンアイゴッコ(仮)
「だめじゃん、わたし……」

ダメどころかマイナス。全然だめだ。

私の感情はいつの間にか東雲によって左右されているのは分かりきっているのに、根っこの部分は不安定。東雲の優しさによって継続されている関係。

いつ、私なんていらないと言われるを待つだけの関係。

「……ううぅ……やだ……」

胸に熱いものが込み上げてきて、容赦なく涙腺を刺激する。

一度関係を清算すべきだよ、と囁く天使と、やだ、離れたくない、とわがままを言って泣く悪魔が心の中で終わりのない会議を開いている。



「おじゃまします」

しゃがんだままそのままでいると、律儀に挨拶をする東雲の声が玄関の方で聞こえた。急いで目を擦り、涙の痕跡を隠すとバスルームを出た。


「おかえり。道に迷わなかった?」

「さすがにこの距離で迷うわけねえだろ」

「そっかそっか。でも、東雲だからナンパはあり得ると思うな」

「あり得てたまるか」


軽口に笑う。思えば、東雲は私と会う時、ほとんどスマホを触らない。コンビニまでの距離で連絡を取るのか。

「(好きな女の子とは、どんなこと話すのかな……)」


ああ駄目だ。離れていても隣にいても、思考回路は目の前の人のことで占領されてしまっている。
< 191 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop