レンアイゴッコ(仮)
東雲は私に布団を被せると静かに頭を撫でた。幼い頃風邪を引いた時、父がそうしてくれたように。

東雲のせい。私に恋心を植え付けた東雲は私に水と栄養だけを与え、太陽を与えない。光合成が出来ずに育って、色はつかない。真っ白な恋心は、いつか枯れる。

「今日はゆっくり休んで。妃立が寝たら帰るから」

枯れてしまうのに、私は手を伸ばす。

「……帰んないで」

差し出した手を東雲は掴む。繋がれた手にいつもの冷たさはなく、温かい。

「一人の方がゆっくり出来るっしょ」

温かくて、冷たくて、甘くもないのに。

「……琥珀と一緒の方がいい」

私は東雲の手を離したくない。

「寂しい?」

「寂しい」

「(……あ、)」

そうだ、私、ずっとさびしいんだ。

「久々に寂しいって思っちゃった」

こないだも、今日も。ううん、ずっと前から寂しいって思ってた。

「そう、良かった」

「なんでいいのよ」

「俺の努力の結果だから?」

「(なによそれ)」

東雲は重要なことははぐらかす。好きな人のこともそう。のらりくらり躱されて、肝心なことは何一つ教えてくれない。
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