レンアイゴッコ(仮)
東雲のせいなら、東雲のせいにしていいのなら。

「ねえ、東雲」

「んー?」

「(好きな人とは、どうなったの?)」

あ……どうしよう。やっぱり聞けない。

喉の奥に言葉がぺたりと張り付いて、代わりに口の中にはなんだか苦さが溢れて、出ていかないでと言っている。

嫌な女になりたくない。好きな人が好きな人に振られて欲しいって、そんな最低なことを願って、傷ついている東雲なんか見たくない。

好きな人が笑顔でいてくれる方が嬉しい。

もしも好きな人上手くいかなくて悲しんでいるなら、私と一緒の時は考えなくていいようにしてあげたい。

私の役目は片想いのせいで空っぽになった、東雲のタンクを満たしてあげること。

「なに、どうしたの」

でも。

「風邪、移していい?」

本当は風邪でもなんでもないって分かってるけど、東雲のせいで溢れてしまう、この苦さを消して欲しかった。

「無理」

「だよねー」

「ウソ」

からかうように触れる唇。ちゅっと音を鳴らして、離れていく。離れてほしくない。そこまで高望みできない。


「早く治せよ」


…………ねえ、自惚れていいから。

私と同じこと、好きな人にはしないで。
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