レンアイゴッコ(仮)
明日晴れるかな
あの日私は思い出した。
たった一つの引き金で世界が変わることを。
𓂃𓈒 ❅ *
ちょっとしたトラブルがあった。部長が寄越した新たな案件の資料に目を通して、会議室に呼ばれた同僚は全員目を丸くした。どう見てもおかしい。
「え……?金額どうしたの。市場の半額以下よ」
「ていうか納期。納期見てください!絶対無理ですよ、こんなの」
「なあんで引き受けるかな、部長……」
部長はこの状況に陥るのを予期していたのだろう、既に退席済だ。依頼主はCMでもよく見る名前。部長の事だ。どうせ大企業の名前に釣られて、舌先三寸で採算にならない仕事を受諾したのだと思う。
一番先に腰を上げたのは東雲だった。
「東雲、どこ行くの?」
「交渉。昼までには戻ります」
「え……東雲、仕事は!?」
東雲の背中に問いかけるが、彼は振り返ることなく会議室を出て行った。ノートパソコンを開いた宮尾ちゃんは、あっと声を出す。
「任されていた修正、共有フォルダに提出されてます」
「(有能……!)」
交渉は東雲に任せた方が良さそうだ。