レンアイゴッコ(仮)
とは言え、新しい依頼も蔑ろには出来ない。東雲が交渉で予算を幾らあげてくれるか分からないけれど、下請けは低コストを徹底しなければ。

この仕事は、1つの仕事をこなせば良いということではない。並行していくつもの仕事を請け負うこともザラだ。

今請け負っている仕事をしつつ、朝一からウェブの制作会社に連絡を取り続けた。

「お疲れ様です、妃立さん!これどうぞ」

「ありがとう」

連絡の合間、苑田さんは私にぶどう味の飴をくれた。糖分を臨んでいたので有難い。

「(東雲、大丈夫かなー……)」

嫌がる部長も巻き添えとして同行していたけれど、部長は同行されて当然だと思う。コロンとした飴玉を口に放り込んで、壁がけの時計を見た。と、その時。違和感に気づき、唇に指で触れる。

「(……あれ、これ……)」

どこかで感じたことのある味だった。どこだっただろう。

……あ。

東雲のキス?

思い出に答え合わせをするとざらっとした気持ちを抱き、やめた。

派遣とはいえ同じ職場で働いているんだし、飴くらいシェアするでしょ。こないだも一緒に残業したんじゃない?

「(一緒に残業……?)」

飴をシェアするのはいいけど、一緒に残業は見逃せないんですけど……!!
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