レンアイゴッコ(仮)
「お疲れ様です」

そんな時、私と坂下先輩の間ににゅっと東雲が現れるから、当たり前におどろく。

「うわ、びっくりしたー……!交渉、どうだった?」

「概ね成功。1500万増額にこぎつけて、残りはうちの出来栄えと進行を見て増額は決めるらい」

「はあ?大手のくせに渋るって、超舐めてるにゃん?」

「(にゃん?)」

坂下先輩の急な猫化に驚きつつ「ですよね!?」と応戦する。と、東雲と一緒に帰ってきただろう部長がオフィスに現れる。

「ああ、疲れた疲れたー……世良くん、苑田さん、ちょっといい?あ、勝手に着席しようとしている東雲もな」

指名された東雲は、私たちにしか聞こえない程度の声量で「……うざー……」と悪態を吐き出して立ち上がった。ブラインドの降ろされた、閉鎖的な空間へと吸い込まれる東雲の背中を見送る。

「……東雲って、彼女いるけど、長年片想いしてるんですよね」

「らしいね。なんとなく分かるけどね」

「は?坂下先輩、天才ですか?」

「ていうか、アンタが鈍感すぎよ」

「え……!?ていうか坂下先輩が知ってるってことは社内にいるんですか?」

「多分ね」

衝撃だ。

事務のまりこちゃん?それとも、受付の加賀美さん?

「え……もしかして苑田さん……!?」

「あの態度を見て苑田さんは無いでしょ」

「ああ、そっか、そうですよね……」

「案外、分かりやすいのにねえ」

坂下先輩は、気の毒と言った声色だ。

……ということは、目に見えて特別扱いしてるってこと?
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