レンアイゴッコ(仮)
特別扱い、特別扱い……。

そもそも、特別扱いってなに?

東雲は普段、全人類分け隔てなく無関心☆ってスタンスだからなあ?

あ、でも二人で交渉に行く時はお喋りかも。けれども、東雲の空気感だと無言も心地よいから困る。

あとは飲み会の時はちょっとお喋りになるよね。感情も豊かな気がする。体感。同期飲みの時はさらに砕けているよね。大体、飲み会も同期飲みの時も東雲は私の隣か目の前に陣取っているし、世話焼き……、

ふと、思考回路が停止した。明確な意志を持って止めたのだ。なぜなら、ひとつの可能性がよぎった。

「え……まさか、」

───……「(わたし?)」

いやいや、無いって。無い無い。

そんなはずない。そんなはずあれば、毎回東雲はどんな気持ちで私の呼び出しに答え、一緒に飲んでいたんだ。

どんな気持ちで私を家に上げてたんだ。

……どんな気持ちで、


「自惚れても、いい?」


彼氏役を務めて……。


「どうしたの?」

「……や、いや、ないです」

「なにがないのよ」

「ないです、無い無い」

「ふうん?まあいいか。妃立、この辺よろしくね」

「はい、了解です」

よぎった可能性に一旦蓋をするみたいに閉じ込めて、それから資料に目を通した。けれども脳裏に浮かぶ光景は鮮明で、あの甘いキスも、細める時の目の優しさも、溶けるような声も思い出されて、いっとう心が疼いて仕方なかった。
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