レンアイゴッコ(仮)
やっと解放されたのは、日付を跨いだころだった。ノンストップで抱き続けられたらしい。

「うぅ……こえ、でない……」

喉も重症だけど、身体は甘だるい倦怠感が残り、特に、腰や股関節辺りは暫く動かしたくない。

「次からは気をつける」

平然とした態度で宣誓した東雲は、私に自分の服を着せ、ベッドに戻った。東雲は私の隣に寝ると、頭の下に腕を通し私を抱き寄せる。

「……ねえ、近いよ」

「近いね」

「もう少し離れよ?」

「嫌だ」

「こんなに近くても、何も楽しくないよ」

「見ているだけで楽しいからもっと近くで見たい」

「適度な距離がいいと思うな」

「俺はこの距離がいい」

「(……わがまま)」

東雲に言わせると素直。私に言わせると愛おしい。
これが私たちの距離。

「……そういえば、渡したいものって何だったの?」

「家に呼ぶための口実」

「そんなことしなくても、着いてくるのにさ」

「俺も色々と努力したんだよ」

東雲は私に努力と言う言葉をよく使う。東雲の誠実さだ。嬉しさで頬が緩み、調子に乗る。

「例えば?」と顔を覗き込むと「……色々」と、東雲は離れようとする。また、調子づく。

「琥珀くん、離れてかないでよ〜?」

「うるさい。早く寝ないとまたするよ」

「今日は禁止」

「即答か」

くすくすと笑いながら、東雲の胸板に擦り寄る。
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