レンアイゴッコ(仮)

「(あれ……でもそう言えば、東雲って好きな子いたよね?)」


マンションの外に出ると、東雲の部屋を見上げた。

カーテンまで締め切られた南側向きの窓に、東雲の気配は無い。

誕生日に振られた可哀想な私の提案を、誕生日プレゼント代わりに呑んでくれたのだろう。

──「好きな子の代わりってこと、かな」

お互い利害関係が一致しただけのこと。
その他に感情なんて今更ないはずだ。


𓂃𓈒 ❅ *


一度着替えに実家へ戻るとすぐさま会社へ向かった。

ラッシュアワー特有の圧迫感。鋼鉄の巨人のように建ち並ぶオフィスビルは、朝が一番活気で溢れている。

とあるビルに入ると、会社のあるフロアでエレベーターを降りた。

私はオフィスビルの17階にフロアを構えるこの会社で、お客様のホームページやECサイト制作を手伝う、ディレクターとして働いている。

元々はインテリアデザイナーになりたかったのだけど、専門学校の先生に成績は申し分無いのにセンスがちょっとと言われ、諦めてこの業界にやってきた。

文化系にみえて、案外体育会系。残業は当たり前だし、すごく理不尽なことも多い。

毎日、クライアントとの戦い。どんなお叱りの言葉を頂くのか、またどうやって納得させるのか、朝のこの時間に身をきよめる覚悟でエレベーターに乗っている。
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