レンアイゴッコ(仮)
話が逸れた。飴の話に戻そう。東雲はすぐに説明をくれた。あまり楽しくなさそうに。

「鈴木が“妃立さんからです”ってくれたよ。なんか、変な味の飴」

どんな味の飴だろうかと、考える。考えるだけ無意味だ。

「ごめん、身に覚えがないし、変な味の飴は東雲にはあげないかな」

「…………」

鈴木の思惑はおそらく瞞着、或いは冷やかし、それから揶揄。
それに気付いた東雲は無言のままため息を落とした。

「なんで受け取るかな」

「ちょいちょい差し入れくれるだろ。直接じゃなくて、鈴木経由とかで」

経験ゆえに信じたらしい。しかし、そんな怪しいパッケージの時点で私からだと思うのか?ちょっと不審に思ってほしい。

会社の外に出ると、冬の寒さが手厳しく出迎えるので、首にマフラーを巻いてきゅっと肩を窄めた。

「東雲、気をつけないとそのうち妃立柑花詐欺に引っかかるよ」

言葉を吐き出すと白い息が逃げる。

「……仕方ないかな」

「(引っかかるのね)」

ちょっとした不安を感じるので、何か対策を講じなければと悩んでいれば、当の東雲は「そうだ」とスマホを開いて見せてきた。

「そういえばV1のチケットもらったけど、行く?」

「行きたい!どこのチーム?」

「日本代表で言えば……」

そう言って東雲は画面をスクロールさせるので、身を寄せ合ってそのスマホを覗き込んだ。
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