レンアイゴッコ(仮)
無口だと思っていた男は、案外、愛を語る。

私にしか見せない特別。私に許された特権。

些細なそれらは飽和されず、見つける度に愛されているのだと実感する。

しかしこうなってしまえば、欲張りな私は一番になりたがる。私の知らない場所まで独占したくなる。

「ねえ、琥珀はいつから私の事好きだったの?」

「……いつから?」

愚問のように尋ねられた。

「飲み会で話してた、片想い相手には振られたの?」

「振られてないから今付き合ってるんだろ」

あっさりと認められた。けれど、私の脳内には疑問が溜まり、唖然とする。

「…………好きな子、毎回違ってた?」

私の記憶違いで無ければ、頻度はさほど多くはないけれど、飲み会で酔う度に東雲は“好きな人”の惚気を聞かせていた気がするけれど。

私の疑問に、東雲は含みを持たせて笑った。

「さあね」

追求の余地あり。しかしこれは、追求した方が恐ろしい気がするの。

「やっぱ……なんでもないです……」

「おしえてやろうか?」

「い……らない、いらないです……!」

「釣れないこと言うなよ、柑花」

東雲は楽しそうに私を組み敷いた。

優しい彼は、優しいからこそ、私を遠ざける。
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