レンアイゴッコ(仮)
嫌な予感はしていた。逃げても何処かで必ず会うのは分かっていた。

「東雲くんが無理なら、妃立さんにお願いするしかないねえ」

エレベーターの中でそれはやってきた。支社の人員が足りてないのは知っていた。人員が足りないくせに安請け合いするから近頃支社は自転車操業。本社に皺寄せが来ていると、噂で聞いた。

「社内恋愛なんて、イメージが悪いでしょ。ただでさえ僕ら、予算使いすぎだって経理部から目をつけられてるのに」

俺は、俺の心は、妃立柑花が関わるとめっぽう弱い。

「ね。東雲くん次第だよ。いい返事、期待してるからね」

見守っていたかった。いつしか欲が出た。

近頃の俺は、どうすれば彼女が笑ってくれるか。どうすればその笑顔が継続されるのか。どうすれば近くでそれを見れるのか。


願望ばかりを飽きずに考えている。


10話・花より団子、団子より君 終
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