レンアイゴッコ(仮)
「やっぱ、なにか隠してるのかなー……」

ぐにゃり。背骨がやわらかくなったみたいにへなりと力なくへたり、机の上になだれ込んだ。

「あらあら、相当キてるのね」

坂下先輩はそう言って、ころころと椅子を動かし移動した。おそらく、東雲の死角になるようにだ。

「でも、東雲のことだから意味の無い嘘はつかないんじゃない?」

「嘘はないかもしれないけれど、私に何も言わないのがやっぱ腹立ちます。部長に打診された時になんで私に何も言わないかなー……」

「それは、妃立に余計な心配をかけるのが嫌だっただけでしょ。健気じゃないの」

「そうかもだけど、私はそんなに簡単に割り切れません」

信用が無いのか。恋人に信用されるにはどうしたらいいんだ。なにか方法は無いのだろうか。ああ、こう考えている時点でもうめちゃくちゃヘビーだし、私、東雲のことだいすきじゃん。

「割り切れなくても、やり切れなくても、案外真面目で死ぬほど一途で、あんた以外眼中になくて、あんた至上主義の東雲よ?妃立が信じてあげなくてどうするのよ」

「そうなのかなあ……」

「きっとそうよ。さ、仕事しましょ」

坂下先輩はそう言って自分のデスクへと戻った。

「(……信用される方法……)」

髪型が変わったこととか、服装は見えるからいい。信頼は目には見えないから難しい。目に見えないものを可視化させる仕事をしているからこそ難易度が分かる。
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