レンアイゴッコ(仮)
「え、まさか今日一日不機嫌だった理由って、それ?」
まさかね、まさか。
可能性としては、宝くじが当たると同程度だ。
東雲の視線と甘く絡まる。アーモンド型の瞳はいつものように俯瞰的で、ミステリアスな色気を纏っている、けれど。
「…………そうだよ」
東雲の視線が逃げていく。その横顔も良い。顔が良いよ東雲。
ていうか、そうだよ?そうだよって言った?……今。
当たると思っていなかったからこその衝撃で、手指の神経から身体の中心まで一気に発熱してゆく感覚に陥る。
「俺が取り返そうか?」
そんな私に、東雲の視線が戻ってくる。その瞳は何かを訴えていた。
「……取り返すって、なにを?」
「部屋の鍵」
「どうやって」
「元彼の連絡先を教えてくれたら、俺が話をつける」
東雲にとってはまるで仕事の延長線。定例会議前のやり取りに辟易した。
「そんなこと、お願いするわけないでしょ」
けれど、これは仕事ではなく間違いなくプライベートで、東雲と元彼との問題でもなく、当事者は私と元彼。