レンアイゴッコ(仮)
「家に帰れないと不便」
東雲は人差し指を立てるので、うん、と頷いた。
「妃立さんは元彼には会いたくない」
中指まで立てるから、再び頷いた。指先も綺麗だ。どんな手入れをしているのか気になるし、何も手入れせずにその白さと滑らかさであればジェラシーである。
「会いたくないに決まってる」
指先に気を取られつつ返事をすれば、東雲は手を下ろすと同時に息を吐き出した。
「だったら俺が何とかする」
「でも……東雲には関係ないし」
「関係、もう出来たよね」
「……」
「付き合ったからには、彼女の不安は取り除くべきでしょ」
はっきりと言い切る東雲の目を見れば、嘘やからかうつもりがないことくらい、私でも理解出来た。
理解出来たから、思わず。思わず顔を両手で覆って、膝から力が抜けたようによろよろとしゃがみ込んだ。
「……思った以上に彼氏だった……」
しかも、私が思うよりずっと、東雲はちゃんとした彼氏だ。