レンアイゴッコ(仮)
諦めて、流れに身を任せた。じたばたするよりも、そうする方が楽だった。

「東雲、手、おっきいね」

「まあ、男だから」

「文字打つの早いわけだ」

「そっちかよ」

「あと、案外冷たい」

「末端冷え性なんだよ」

……じゃあ冬になったらもっと冷たいのか。そんなことを言えたらいいのに、この関係がいつ終わるのかわからないので言えるわけもない。

バス停にたどり着いてはい終わり、とならず、手は繋がれたまま、バスが来るまで継続されるらしい。


「じゃあ、また来週」

「うん。お休み」


バスが来ると東雲は手を離し、私の頭をポンポンと撫でて離れた。流れる水が如くの動作だった。

私は彼女、一日目。対して東雲は、彼氏、一年目の頼もしさがある。

次の恋愛が最後の恋になればいいと思う。けれども、期待通りにならなくても、次を探せばいいとも思う。悔やんでいる時間が無駄。

弟、に言わせれば、私は' 甘え下手 'なのだと言う。他人に頼れない私を、生き辛い人間だと、弟はうんざりする。

けれど、自己完結する方が楽だ。他人に頼るから、甘えるから、期待通りにならなかった時の絶望が生まれる。裏切られた、なんて思う方が辛い。


「(東雲には、本命が別にいる)」


そう思う方が、この恋愛ごっこは楽なのだ。
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