レンアイゴッコ(仮)
SHOW OFF
マグカップをセットしてカフェラテのボタンを押すと、コーヒーメーカーが湯気を立てながら、ブラックコーヒーを注ぐ。それから優しいミルクが落とされると、カップの中が薄いブラウンへと変化していくのを見た。
なんだか、東雲みたいだと思った。
会社では真っ黒で悪魔のような東雲は、会社から一歩外に出ると絶妙な白を使い分ける。沼だ。
25歳と三日目のお昼、私は会社の給湯室に居た。先ほどキッチンカーでピザランチを手に入れたので、カフェラテをお供にしようと思ったのだ。
「(手、大きかった……)」
手を繋いで頭を撫でられただけで、何をときめいているんだ。中学生のように甘酸っぱくどきどきし始めた心臓を胸の上から撫でていると、誰かが給湯室に入ってきた。
「あ、いたいた妃立さん。整骨院のWebサイトの件ですけど、納期と見積もりの案が出たから午後説明に行って欲しいって世良さんが言ってましたよ」
溌剌とした男の声は、後輩の鈴木のものだ。
「了解です。整骨院って、確か……」
「東雲さんが担当なので、東雲さんと二人じゃないでしょうか!」
「東雲かあ」
ポツリと呟くと、鈴木はニヤリと企んだ笑みを浮かべた。