レンアイゴッコ(仮)
出来れば、今、東雲と二人になりたくなかった。

「どうかしたんですか」

「別に」

別に、と言いながらも東雲の纏う雰囲気にはどことなく圧があった。

同期との恋愛はまあまあむずかしい。

なぜなら、この二日間の休日に私は思い出していたのだ。恋愛対象じゃなかったからこそ、東雲には恋愛の悩みを散々話した記憶がある。

たとえば、待ち合わせにルーズ、まだ許せる愚痴。
既読スルーがムカつく。……これもまだ許せる。

" 遅い、痛い、イッたか確認する " 元彼のイヤな三拍子を仔細に話した気がする。酔っていたとしてもこれは許されない。思い出した時にはお風呂の中に顔を沈めて思い切り叫んだ。

他にもそんな思い出がある気がするけれど、私のためにも思い出さない方がいいと思うし、願わくば、東雲の記憶から色々抹消したい。


助けを求めて鈴木を見遣る。運悪く、切らしていたのかコーヒー豆を替えていた。目が合った鈴木はサムズアップするので頭を抱えた。

その時。

「っ、なに」

「別に」

東雲が私の髪の毛を掬い、後ろ髪をくるくると指で巻き付けて遊び始めたのだ。背後は壁なので誰にも見られないとは言え、これはなかなか恥ずかしい。
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