レンアイゴッコ(仮)


「分かってるなら、何してんのよ!」

狭いエレベーターの中にキンとした私の声が響く。強い眼差しで咎めても、東雲の表情は変わらない。

「でも今は休憩中」

なんだこの男は。私で遊んだかと思えば、突然へりくつを言う男になったらしい。

これは本当に東雲なのか、それすら疑わしい。

「一体どうしたのでしょうか、急に。転生でもされましたか」

なので、私もちょっと惚ける。

「俺は大変遺憾です」

東雲、どうやら政治家へ転生したらしいので、「何が?」と、何気ない熱量で訊ねた。

「" 東雲と妃立は同じ部屋で寝ても、何も起こらない "?」

東雲の温度がひと段階下げられた気がした。
けれども、なにもそれは突然冷えた訳じゃなくて、元々冷水に氷を一つプラスされていて、徐々に冷えていって、私はその冷たさに気づかなかっただけだ。

「……え?」

東雲が私の方を向く。体格差があるから、面と向かうと威圧感がある。

「本当にそう思ってんの」

一歩詰め寄られ、後退するのは必然。

いつからだろう。

「俺も男だって忘れてないよな?」

その視線が絡み合うと体に熱が溜まるようになったのは。
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