レンアイゴッコ(仮)
「(……良いんだ)」
もう一度、良いんだ、を心の中で噛み締めるように再確認する。
今まで一度で良いから言って欲しいと願ってだれにも言って貰えず、けれども、まさか東雲に言って貰えるなんて思わなかった。
告白されるくせに振られるのは私の恋愛における典型的な例文で、振られる度に愚痴を聞かされていた東雲はおそらくそれをよく分かってる。
「他には」
ベッドの上で胡座をかく東雲は気怠いオーラを纏っており、それが彼の色気を後押しする要因になっていた。
「なにが?」
色気に充てられながら訊ねる。
「俺への要望。都度修正するから」
「仕事ですか」
「カレシだよ」
ハッキリと鼓膜に落とされ、耳に熱がこもる。
「……急な彼氏モードは心臓に悪い」
「善処する」
「でも、少なすぎると味気ない」
「なんだよそれ」
「……何をどう応えていいか分からないけど」
「真面目か」
「付き合う以上は、あんたの彼女らしくするから……………………以後、よろしく」
おそるおそる右手を差し出す。これが今できる私の精一杯。東雲が私の勇気を包み込む。
「こちらこそ、今後ともよろしく」
彼の体温が私を中和していく。