レンアイゴッコ(仮)
基本的に無駄残業が嫌いな私だ。定時上がりを決めた以上タスク管理を徹底しスムーズに午前中の仕事を終わらせた。とんでもないトラブルがない限り待ち合わせに遅れることは無さそうだ。

キッチンカーでピザを手に入れた。ランチサービスでフライドポテトとドリンク付きだ。社食は人が多いし他の課……特に営業課が大きな顔をしていることが多いので、顔見知りが多い制作3課の休憩室へ向かった。

目論見通り、オフィスは疎らで休憩室には誰もいない。

休憩室に点在するテーブルの1つを陣取り戦利品を広げる。ピザを一切れ取るとチーズがとろ〜りと伸びるだけ伸びてしまう。出来たて熱々なのが悩ましいなんて贅沢な悩みを抱え、食べるタイミングを見計らっていれば休憩室のドアが開いた。

縦に伸びた大きな図体は東雲である。

他人に世話焼きな男は、自分に不摂政だ。今日もどうせ、ゼリー飲料かシリアルバーで昼食を済ませたのだろう。

「お疲れ、東雲」

「……おつかれ」

やる気のない返事をきかせた東雲は私の向かいに腰をおろす。

「(そうだ。東雲も食べるかな……?)」

左手にピザと、右手にフライドポテトを持つ。

「どっちか食べる?」

「……真ん中食べる」

「真ん中?」

選択肢が増えるのはどうしてか。
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