レンアイゴッコ(仮)
──綺麗な男の無言の圧力たるや。身を以てその威力を感じ取る。

同時に、東雲の言わんとすることを理解した。

「危機管理、とか、思ってるでしょ」

私の恋愛感を知る東雲だ。

「思ってる」

思った通りの回答も、何故か納得出来る。

「いくら何でも、合鍵をどうでもいい人には頼まないよ」

「俺に預ける時点で危機管理能力が皆無なんだよ」

何を言っているんだ。真逆だ。東雲以上に安心感のある男は父か弟、他は……、あ、一人だけいる。


「……じゃあ、絶対に悪用しない、男友達に預ければいい?」

可能性の一つを告げれば、東雲は私の手からひったくるみたいに合鍵を奪った。

「それは駄目」

「(なんだそれ……)」

素直に甘えるだけでいいのに、合鍵の管理も、理由がなければ出来ない下手くそな私たち。

「ありがとう」

小さくお礼を言って、一安心。

「預かる代わりに抱きしめても良い?」

それもつかの間、目の前がチカチカと爆ぜた。
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