レンアイゴッコ(仮)
「東雲がモテるのは顔だけじゃ無いでしょ」

私がぷくっと頬を膨らせるばかりで鈴木の相手を放棄していたので、代わりに坂下先輩が鈴木を慰めていた。

「じゃあ、身長ですか!?」

「ぶー」

「仕事が出来るから!?」

「それもあるだろうけれど、無愛想な男がたま〜に見せる素顔に、女はコロッとやられるんでしょうが」

「(確かに)」

頷ける。

あの顔面レベルで「駄目?」と上目遣いをされた時の私の理性、防御力ゼロだったもん。

「なるほど〜!俺も無口になればいいんですね!」

「「無理ね」」

「くそう、やっぱ顔か〜っ!」

悔しがる鈴木を横目にグラスを傾けていると、突然「おつかれー……っす」と、上部からクタクタの声が落っこちた。グラスを手に持つのは東雲だ。

「ここ、いい?」

「どぞ!!」

東雲は私と鈴木の間へ入り込むと、窮屈そうに腰を落とした。流石に強引すぎだし、何で急に……!?と周囲を見渡すけれど、お酒を行儀よく飲む人なんてここには居ない。鈴木もまたその一人だ。

「東雲さん、香水何使ってるんですか」

現にさっきまで東雲のことを憎んでいたくせに、興味津々である。
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