コイワズライ

5

「私も、(なお)くんのことがすきです…(なお)くんがほしいです…!」


「……………ぶふっ!」


少しの沈黙の後、(なお)くんがふきだした。肩を小さく揺らしクックックッと笑っている。


(え!?なに!?なんか間違えた!?)


「……うん。うん…知ってた」


(んん!?)


(こと)わかりやすいし、すぐ顔にでるでしょ?僕のことすきなんだろうなって」


(ば、ばればれ…恥ずかしすぎる)


「でも今日、既読無視だし、放課後またされるし…もしかしたら勘違いかもって…」


だから昨日と全然違ったんだ。こんなに必死だったんだね。


「勘違いじゃなくてよかった」


安心してホッとする(なお)くんは嬉しそうに笑っていて、そんな(なお)くんにつられて私も顔が笑ってしまう。


「それにしても、(なお)くんがほしいですって…(こと)ってばえろ~い」


「え?そ、そういう意味じゃなくてーー」


「じゃあ、どういう意味?」


妖しく微笑む(なお)くん。耳元で囁かれた低い声にぞくぞくして私は咄嗟に下を向く。


「へっくしょんっ!」


「大丈夫?待たせちゃったから風邪ひいたのかも。ごめんなさい」


次の瞬間、(なお)くんの腕に包まれてぎゅっと抱きしめられていた。


(なお)くん…?」


(こと)、あったかい」


(ひえぇぇぇ)


「僕も(こと)がほしい…」


目が合って頬を包まれる。
ちゅっと優しくキスをされて、ゆっくりと目を閉じた。


私だけにみせる(なお)くんの表情を独り占めにしたい。だから咄嗟に、ほしいっていう言葉がでてきたんだと思う。


目を開けると、(なお)くんは少し赤くなって幸せそうに笑っていた。そんな顔もキレイでかわいい。


(なお)くん、かわいい」


「は?なに言ってんの?」


口元に手の甲をあてて顔を隠す。やっぱりすきだなぁ。


照れた(なお)くんの後ろにちょうど夕陽が重なって。ますます赤くみえる(なお)くんの顔を、ずっとずっと覚えていようと思った。


これからも、私だけの(なお)くんをたくさんみせてね。


(こと)の方が何倍もかわいい…」


「だから、そういうのは心臓に悪いんだってば~~~」
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