コイワズライ

2

「ねぇ、あずさって(みなと)くんの幼なじみなんでしょ?」


「そうだけど?」


休み時間、廊下に出ると女子に話しかけられた。違うクラスの名前も知らない子。


(みなと)くんって彼女いるのかな?」


「さぁ?いないんじゃない?」


「そっかぁ~よかった。ありがと」


(最近増えたな、こういうの)


(みなと)と私は同じマンションに住んでて小さい頃から一緒に遊んでた。(みなと)は女の子みたいにかわいくて、私は男の子みたいにやんちゃだったから、いじめられてる(みなと)を私が助けていた。


小学校・中学校では体型のことでからかわれたりして((みなと)はぽっちゃりしてたから)皆の前では平気なふりして笑ってたけど、陰でこっそり泣いていたのを私は知ってる。


そんな(みなと)が高校に入学してから変わった。運動音痴な(みなと)が必死にダイエットをして減量に成功。かっこよくなったと周りに騒がれて最近たくさんの女子が(みなと)のことを聞いてくるようになった。


(みなと)が努力していたのを近くでみていたから、それが報われて嬉しいはずなのに。


「なんかモヤモヤする」


***


放課後、下駄箱で靴を履き替えて帰ろうとしたらまさかの雨。


(そういえば朝、母さんが傘持ってけって言ってたな。バタバタして忘れてた)


「あずさ傘ないの?」


振り返ると(みなと)が靴を履き替えているところだった。


(みなと)いいとこ来た!傘入れて!」


ぽんぽんと私の肩を叩くとふぅとため息をつく。こんなにもったいぶるってことは


「残念でした。俺も傘ない」


「やっぱり…使えねぇな」


「お前な、俺のことなんだとーー」


「よし!じゃあ家まで競争しよっか!?」


「ぶっ小学生かよ」


「負けたらジュースおごりね!」


「おーしょうがないから付き合ってやるか」


(みなと)くんっ」


聞き慣れない女子の声がして、振り返るとまた知らない子が(みなと)のブレザーの裾をつまんでいる。しかもとびきり可愛い美少女。


「傘、私のでよければ入ってく?」


「え?あ、いや、でも」


チラと私の様子をうかがう(みなと)


「よかったじゃん!せっかくだから入れてもらいなよ!」


「…お前も傘ないだろ?」


「私?私はーー」


辺りを見回すと下駄箱に向かってくる優斗(ゆうと)の姿が見えた。


「ゆ、優斗(ゆうと)に入れてもらうし!大丈夫、大丈夫!」


下駄箱にやって来た優斗(ゆうと)はイヤフォンを取り、なに?と怪訝な顔をしていた。そんな優斗(ゆうと)を急かして強引に傘に入れてもらい、(みなと)の呼び止める声を無視して走った。
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