コイワズライ

5

キスをしている間、雨の音も雷の音も遮断されて、(みなと)の体温と心臓の音だけを感じていた。
さっきまでずっと、こわいこわいと思っていたのにそんなことを考えられないくらい頭がふわふわしてる。


そっと唇が離れていった。
寂しくてぼんやりと(みなと)をみつめる。


「…あずさ、そんな顔すんな。キスだけじゃ済まなくなる」


(みなと)が私から顔をそらしゴホンッと咳払いした。耳まで真っ赤になっている。


たちまち私も顔が熱くなって、慌てて(みなと)から離れた。


「ご、ごめん…」


「帰ろうぜ、雷止んだみたいだし」


「そうだね」


二人でタコのすべり台から出た。まだぽつぽつと雨が降り続いていたので、(みなと)優斗(ゆうと)の傘をさして、その中に入った。


並んで、帰り道をゆっくりと歩く。(みなと)はまだ顔が赤いままだ。


マンションに着くまで、私たちは一言も話さなかった。会話をしていないのに気まずくはなかった。(みなと)といると黙っていても心地いい。不思議だ。


「じゃあ、また明日」


(みなと)


マンションに着いて、部屋に帰ろうとする(みなと)を呼び止める。


「さっきね、(みなと)と…キスしてる時、嫌じゃなかったよ。なんかふわふわして、よくわからなかったけど…」


「うん…」


「だからね、私ね…(みなと)のことすきなんだ…と思う」


「うん…」


「いや思うっていうか、すき…」


「うん…」


「あはは…それだけ!じゃあね!」


帰ろうと踵を返したら、手首を掴まれて引っ張られる。そのままぽすっと(みなと)の腕の中におさまった。


「っとに、お前はせっかちだな」


ゆっくりと唇が重なる。
さっきよりも長いキス。


「…っ、俺が言おうと思ってたのに先に言うなよ。バカあずさ」


「バカはアンタでしょ!バカ(みなと)!」


「……ふふっ、まぁいいやバカでも」


「なによ、調子狂うし」


「じゃあな、また明日」


「明日は早く起きてよね!」


「へいへ~い」


私も明日は早く起きよう!


晴れるといいな~









翌日、(みなと)も私も風邪をひいて学校を休んだ。


2人分のノートをとってくれた優斗(ゆうと)が、わざわざノートを届けてくれたんだけど…


(みなと)と私は優斗(ゆうと)のお説教を受けるはめになった。


雨の中、傘をささずに走って帰るのはやめます。


折り畳み傘をロッカーに置いておかなきゃ…

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