コイワズライ

(あゆみ)~週末家に来いって母さんが」


「え?」


「甘い菓子いっぱいもらったから食ってほしいってさ。(はるか)(妹)も会いたがってるから来いよ」


「あぁ、ごめん。用事あるんだ」


「暇人のくせに何の用事だよ」


「うるさいな。私にも色々あるんだよ。おばさんと(はるか)ちゃんにごめんって言っといて」


「おー」


気付かれてないよね?


もうすぐ隼人(はやと)の誕生日。私たちは毎年プレゼントを贈り合っている。小さい頃からの習慣が今も続いているだけで特別な意味はない。


なので毎年かなり適当なプレゼントを贈っていたのだけど(孫の手とかミッキーのカチューシャとか)、奴はこの適当なプレゼントを全部大事にとっているのだ。乙女かよ。


そのことを知ってから、ちゃんとしたプレゼントを贈ろうと決めた。今年はなんとかっていうブランドのなんちゃらっていうスニーカー、高校生のお小遣いでは買えないレベル。しかたなく年齢を偽ってバイトをすることに。それが今週末の予定。


***


制服に着替えティッシュが詰まった段ボールを抱えて駅前の交差点へ。
新しくオープンしたパチンコ店の広告が入ったティッシュ、それを一箱分配るのが本日のお仕事。


それにしても、制服のスカート短すぎる。パンツみえるよ。パチンコのスタッフ大変だな。見せパンはいてくればよかった。


「姉ちゃん~かわいいねぇ」


来たー!朝からアルコールの匂いプンプンのおっさん!こういう人も対象者なんだからしかたない。


「こんにちは~新しくオープンしました!よろしくお願いしまーす!」


「なんだ?パチンコか~」


ティッシュを手渡すと広告に目をやるが、すぐにポイッと捨ててしまった。


(こいつ!なんてことを!)


落ちたティッシュを拾っていると背後におっさんの気配…


「きゃっ!」


後ろから抱きつかれて胸を触ろうとしている。


「やめてください!」


(こんの酔っ払いジジィが!!)


「イテイテテ…」


おっさんが離れたと思ったら、手を後ろに回されて手首を掴まれてるみたい。


「嫌がってるじゃないですか」


(助けてくれたの!?まだこんな正義感溢れるイケメンがいたなんて!世の中捨てたもんじゃないな!)


「ありがとうございます!」


頭を下げてお礼を言い、イケメンの顔をみると


は、隼人(はやと)ーーー!?!?!?
なぜ、ここに!?!?!?

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