コイワズライ

(顔みられたらバレるよ~)


慌てて後ろを向いて横歩きで移動する。


「お姉さん?」


(ひぃぃっ!!声かけられたー!!)


「このクソガキが~!」


ガコンッという音がして驚いて振り向くとゴミ箱が倒れていて近くに隼人(はやと)も倒れていた。


「大丈夫!?」


慌てて駆け寄って隼人(はやと)の体を起こす。酔っ払いのおっさんがゆっくりと近寄ってきた。


(やばい!!どうするどうするどうするーー)


「お巡りさーん!こっちこっちー!」


遠くから聞き慣れた声がして、声がした方をみると冬馬(とうま)が走ってやってきた。


「チッ!おぼえてろよ、」


雑魚のお決まりの捨て台詞を吐き、千鳥足で逃げていくおっさん。


隼人(はやと)大丈夫!?もう!無茶しないでよ!」


「悪い。助かった。ありがとな」


「お姉さんも大丈夫ですか?…って、あれ?どっかでみたーー」


(ぎゃあ!!冬馬(とうま)!なんて鋭い観察眼!!)


また慌てて後ろを向く。


「わ私は大丈夫~それよりもその子早く手当てしてあげて~ちょっと上司に報告してくるね~」


冬馬(とうま)にササッとハンカチを手渡し、2人に背を向けたまま逃げた。2人に呼び止められたけど聞こえないふりをして。


ウィッグかぶってるしつけま付けてるしメイク濃い目だからバレてないとは思うんだけど…


冬馬(とうま)にはバレてるかもな」


***


ーー翌日


今日は場所をかえて商店街にやってきた。昨日のおっさんにまた遭遇したら嫌だし、隼人(はやと)冬馬(とうま)に会う可能性もあるし。


商店街に訪れる人は年配の方や家族連れが多い。年配の女性や子連れの母親は必ずと言っていいほどカバンにティッシュを入れて持ち歩いている。なので、ティッシュに入っている広告内容は気にせずに受け取ってくれるのだ。


おかげで箱一杯に詰め込まれていたティッシュがあっという間になくなった。こんなことなら昨日も商店街で配ればよかった。


予想外に早く配り終わり、意気揚々と事務所に帰る。その道すがら、昨日の配布場所(駅前の交差点)を通りかかると、またもや奴を見つけてしまった。


(あの背格好はもしや、隼人(はやと)…?)


昨日おっさんに絡まれた場所で屈みこんでウロウロしている。どうやら探し物をしているらしい。


(一緒に探してあげたいんだけど、バレたらまずいし…)


ゴンッ!


「いって!」


探し物に夢中で下ばかりみていたせいで電柱にぶつかった隼人(はやと)


(あぁ…なんなのもう…みてられない)

< 26 / 64 >

この作品をシェア

pagetop