コイワズライ

「探し物ですか?」


見てられなくて声をかけた。振り向いた隼人(はやと)は少し驚いている。


「あ、昨日の…リングを失くしたんです。もしかしたらこの辺に落としたかもって」


「どんなのですか?」


「シルバーのシンプルなやつなんですけど」


(ふむ、シルバーのリングなら、いつも付けてるアレか?それとももう一つの細い方か?)


心当たりがあるリングを思い浮かべながら、私も屈んで辺りを探す。


「いいですよ、探さなくて」


「昨日助けてもらったお礼です」


「あ、いや、でも…」


チラチラ私の方をみながら、僅かに顔を赤らめている。なんだ?


おもむろにカーディガンを脱ぎ私に手渡してきた。


「あぁ、大丈夫ですよ。寒くないです」


「いや、そうじゃなくて…腰に巻いてください」


(ん?あ!パンツがみえるからってことね!)


「これ、みせパンだから大丈夫ーー」


「そういう問題じゃないでしょう!」


真っ赤になって腰にカーディガンを巻きつけられた。そして無言でリング探しを再開する。


(みせパンで真っ赤になっちゃって可愛い奴め)


「ありがとうございます」


こちらを見ずにウンウンと頷いた。


こんな気遣いできるんだ。隼人(はやと)のくせにやるじゃん!


しばらく2人で辺りを探したけれどみつからなくて、諦めようとした時…


「もしかして、ここに落ちてたりして…」


私たちの足元、側溝を指差す。


「あぁ~っぽいですね」


隼人(はやと)が重そうに格子状の蓋を持ち上げて中をみてみると、緩やかに水が流れていた。が、ヘドロ臭くて手を突っ込んで探すのは無理そうだ。


「なにか使えそうな道具借りてくるね。ちょっと待ってて」


隼人(はやと)を置き去りにして近くのコンビニに入り、理由を話してなにか使えそうな道具は借りれないかと店員さんにお願いしすると、裏からシャベルを持ってきてくれた。なんでコンビニにシャベルがあるんだろう?


シャベルを持って戻ると、隼人(はやと)が驚いていた。


「どっから持ってきたんですか!?お姉さん、すげぇ」


シャベルでヘドロをすくい、その中にリングが紛れていないか目を凝らす。何度かそれを繰り返す。


「みつからないねぇ」


「諦めろってことですかねぇ」


「あ!今、なんか光った!」


「マジで!?」


ヘドロをコンクリート上にひろげ、シャベルの先でヘドロをより分けて探してみると…


「「あ!あった!!」」

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