コイワズライ
『プラス2年の片想い』…不憫男子×奥手女子

美羽(みう)何番?」


「8番」


「いいなぁ~窓際一番後ろ!」


「えへへ~」


席替えのクジを引くと一番後ろの席になってしまった。仲良しのユリとは離れ離れ。喋れる女子が近くにいるといいけど。


教科書や筆記具類を手に移動する。窓際の一番後ろの席、私の新しい居場所に腰かけ窓からの景色を眺めた。


(あ~今日も空が青いなぁ~お天気もいいし眠くなっちゃう。この席、最高だなぁ~)


「なにニヤニヤしてんの?」


つんっと額を突かれて驚いて前をみると、同じくニヤニヤ顔の(じん)が座っている。


「わ!(じん)この席!?よかった~喋れる人いなかったらどうしようかと思ってたんだよね~」


「席替えぐらいで大げさだろ!なぁ、(さく)?」


(え?今、(さく)って言った?)


(じん)の視線の先をゆっくりと追っていくと…なんとまぁ私の隣に如月(きさらぎ)(さく)


目が合うと困ったように笑うから、私もなんだか申し訳なくてふいっと視線をそらしてしまった。


「え?お前ら仲悪いの?」


(なんでこうデリカシーってもんがないのかしら男子って!!)


「いや、悪くないよ」


(よくもないけど)


ふ~ん、と興味なさそうに頷いて(じん)が前を向いたので助かった。


***


1時間目が終わりトイレに行って戻ってくると私の隣の席に(なお)が座ってスマホをいじっていた。


(ひぃぃ!なぜコイツが!?)


(さく)の姿を探すと一番前の席に座って友達と楽しそうに話している。ゆっくりと(さく)に近付いていくと私に気付いて、なに?と声をかけてくれた。


「えっと、もしかして(なお)と席替わったの?」


「そうだけど?」


「あ、そうなんだ…」


「嫌だった?」


「う~ん…」


(さく)がちょいちょいと手招きしてきて近寄ると、苦手なの?と耳打ちされ、ウンウンと力強く頷いた。


「戻れないよね?」


ガタンッと勢いよく席を立ったので驚いていたら、一目散に(なお)のところへ向かう(さく)(なお)に向かって手を合わせて謝っているようだ。(なお)は渋々立ち上がり荷物を持ってこちらへやって来た。不機嫌極まりない様子でドンっと机上に荷物を置く。そして私の顔をみるなり口を開いた。


「席、(さく)の隣なの?」


「(怖い怖い怖い)うん」


なるほどね、と呟いて(さく)の私物を私に手渡す。持っていけってこと?


(さく)の私物を手に席に戻り(さく)に手渡すとお礼を言われた。


「私もありがとう」


(さく)は嬉しそうに笑った。
< 29 / 64 >

この作品をシェア

pagetop