コイワズライ

「はぁ」


「5回目」


「え?」


「ため息」


「うそ!?ごめん」


「例の先輩?」


「うん、これみて」


(さく)に先輩とのトークルームをみせた。あぁ…と察した(さく)が憐れみの目でこちらをみている。私と(さく)が逃げ出したマックの件、あれで例の先輩との縁は切れると思っていたのに切れるどころかなぜかしつこくメッセージを送ってくる。昼夜問わず何度も。深夜にも及ぶメッセージ攻撃に私はすっかり寝不足に陥っていた。


「ユリの紹介でしょ?ユリからそれとなく断ってもらえば?」


「それがー」


美羽(みう)~」


噂をすればユリがハイテンションでやって来た。


「先輩ね、美羽(みう)のこと気に入ったんだって!よかったね!これでやっと美羽(みう)にも彼氏できるね~」


そう言って上機嫌で去って行った。


あぁ…と察した(さく)がまた憐れみの目を向ける。マックの件以来、ぎこちなかったのが嘘のように(さく)とは普通に話せるようになった。中学の時に戻ったみたいで嬉しい。これが唯一先輩に感謝できることだ。


「今までユリに遠慮してたけどもう限界!私、ハッキリ言うよ!先輩のこと嫌いですって!」


「嫌いって、それはちょっときついかも」


「だってこういう人ってハッキリ言わなきゃ伝わらないでしょ?」


「う~ん、そうかもしれないけど美羽(みう)にできるの?」


「できるよ!たぶん」


「ついてってあげようか?」


「だ大丈夫!(さく)に頼りっぱなしじゃだめだから」


早速、先輩にメッセージを送った。
『放課後、大事な話があります』


***


「はぁ」


先輩との待ち合わせ場所・中庭にて本日6回目のため息をついた。とりあえず、相手のペースにのまれないように先手を打たなくては!


美羽(みう)ちゃ~ん」


相変わらずの軽い感じでやってきた先輩。よし!早速、言わなきゃ!


「あの、先輩!」


切羽詰まって先輩に近寄るとぎゅっと手を握られた。


(え?)


「そろそろ告白してくる頃だと思ってたんだよね~」


(は?)


「俺はもちウェルカムだよ~」


(げ!どうしよう!勘違いしてる~)


「ち違うんです!そうじゃなくて~」


「そうだ!今からカラオケ行かない?友達がバイトしてて安くしてくれるんだよね~」


「あの、だからそうじゃなくて~」


「え?なに~?美羽(みう)ちゃんの気持ちは言わなくても伝わってるよ!どうしても言いたいなら聞いてあげよう!」


「私、先輩のこと」


「うんうん」


「好きじゃありません!」


「うん?」
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