コイワズライ

「いや~運営側ってこんなに疲れるんだね~」


「ほんと疲れましたね」


「でも充実してたな~最後の花火は盛り上がったね!」


「ははっ、皆びっくりしてましたね!」


「本当はもっと派手にやりたかったんだけど火薬臭くなるからーー」


希子(きこ)


盛り上がった後夜祭の余韻に浸りながら冬馬(とうま)と並んで歩き、校門を出たところで誰かに呼び止められた。


「おつかれ!」


心地良い疲労感と充実した満足感で胸がいっぱいだったのに一気にテンションが下がってしまった。今、一番会いたくない奴に会ってしまったからだ。


「そんな顔すんなよ。ずっと待ってたのに」


「(待ってたんなら片付けくらい手伝えよ!使えねぇな!)なんか用ですか、会長さま」


「2人きりで話したい。冬馬(とうま)ちょっと外してくんない?」


「すみません時間がないので速やかに用件をお話し下さい」


今こんな奴と2人きりになったら余計に気分が悪くなる。退散しようとした冬馬(とうま)の腕を掴み引き寄せた。困惑した様子の冬馬(とうま)は私たちの顔を交互に見てからそっぽを向いた。


「あの頃は可愛かったのに別れてからすっげーツンツンしてるよね」


「(お前が嫌いだからだよ!)用がないなら失礼します」


さっさと帰ろうとしたらズイッと目の前に立たれて進路をふさがれてしまった。そして、私の手をそっと握り潤んだ目で見つめてくる。


「ヨリを戻したい。俺、まだ希子(きこ)が好きなんだ」


ひぃぃぃ~~~気持ち悪い~~~鳥肌立っちゃったよ。早く手ぇ離せよバカ野郎!!
好きな人にやられたら嬉しいんだろうけど嫌いな奴にされたらただの拷問だわ。


「手、離してください。希子(きこ)先輩、嫌がってますよ」


さっきまで我関せずで黙っていた冬馬(とうま)が口を開いた。


「お前関係ないじゃん」


「関係ないのはそっちでしょう?今までずっと希子(きこ)先輩に生徒会のこと押し付けてたくせに、先輩がモテだしたからって急に惜しくなったんでしょう?そんな人に先輩がなびくと思ってるんですか?」


冬馬(とうま)?」


「生徒会の人気なんて全部会長にあげます。でもこの人だけは絶対に譲れません」


驚いている会長に失礼しますと告げ、私の手を引いて颯爽と歩く冬馬(とうま)の後ろ姿から目が離せなかった。

< 39 / 64 >

この作品をシェア

pagetop