コイワズライ

ーー日曜日

昨夜、寝る前にパックをした。朝起きてシャワーを浴びて身体の隅々まで念入りに洗う。メイクもいつもより丁寧に。キラキラのアイシャドウにピンクのチーク、アイラインは長めに引いてグロスもツヤツヤピンク。
今日の為に買った膝上丈のニットワンピにニーハイブーツを合わせる。極めつけに香水をつけて…ふふふ我ながら完璧!


「わっ!やばい!遅刻する!」


コートを羽織りカバンを手に慌てて家を出た。


待ち合わせ場所、駅の改札口に着いた時には待ち合わせ時間を5分過ぎていた。周りを見渡して千晃(ちあき)の姿を探すけど見つからない。背が高いからいつもすぐに見つかるのに。
電話をかけるけどつながらなくて、ラインをしてしばらくここで待つことにした。


ーー1時間後


足痛い…靴ずれしたかな~履き慣れないブーツなんか履くから


改札口周辺をウロウロしても千晃(ちあき)は見当たらないし連絡もつかないし、もしかしてまだ寝てる…?千晃(ちあき)ならあり得る


痛い足を引きずって千晃(ちあき)の家に向かった。


インターホンを鳴らすと今起きましたと言わんばかりの千晃(ちあき)がアクビをしながら出てきた。後ろ髪がピンピンはねている。


「えーっと…恵菜(えな)?」


「……バカ」


しまった!というような顔をしてあんぐりと口を開けている。ぎゅうぅっと千晃(ちあき)の頬を引っ張り、いって!と顔を歪めている間にドンッと押した。尻餅をついた千晃(ちあき)を睨みつけると、背中を向けてさっさと歩き出す。


恵菜(えな)!」


追いかけてきた千晃(ちあき)に後ろから抱きしめられた。


「…ごめん」


ぎゅうっと包み込まれる。寝起きの千晃(ちあき)の匂いに私は弱い。


「…早く準備してきて」


「うん。寒いから家の中で待ってて」


温かい千晃(ちあき)の手に引かれて家の中に戻った。1時間も待たされたのに抱きしめられただけで許しちゃうなんて私ってかなりちょろいな…


千晃(ちあき)がシャワーを浴びている間、千晃(ちあき)の部屋でぼんやりとテレビを見る。
これじゃあ、いつもの休日と変わんないじゃん


シャワーを浴びた千晃(ちあき)が髪をふきながら部屋に戻ってきた。


「足、血が出てる。ケガしたの?」


「え?」


左足の小指が赤くなっている。痛い痛いと思っていたけど血が出てたなんて気付かなかった。肌色のストッキングが血でにじんでいる。部屋に敷いてある真っ白なラグに血が付いていた。


「わっ、ごめん!血がついちゃった!」


ティシュを取ろうと立ち上がろうとしたら千晃(ちあき)に制される。


「これ、脱いで?」
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