コイワズライ

目が覚めてサイドテーブルに置いたスマホに手を伸ばす。時刻は7時25分。


けっこう寝てたな~した後ってなんでこんなに眠くなるの


千晃(ちあき)はまだ気持ちよさそうに眠っている。そっと千晃(ちあき)の髪に触れるとゆっくりと目を開けた。


「おはよ」


「…何時?」


「7時半」


「…あー行く?」


アクビをしながら起き上がった千晃(ちあき)。まだ目は開ききっていない。


「もういい…」


「拗ねてんの?」


「だってどうせ間に合わないもん」


「メイク、すごいことになってるよ」


サイドテーブルにあるスタンドミラーを手に取って鏡を見ると、マスカラが落ちパンダ目になっておりチークもグロスもおちて酷い顔になっていた。


「最悪」


気合い入れてパックして早起きしてメイクしてワンピも新しいの着てきたのに。結局メイクも髪もぐちゃぐちゃだし。


千晃(ちあき)、今日私が着てた服どんなのだった?」


「え?…ワンピース?」


「どんな?」


「う~ん、覚えてなーー」


「どんなワンピだった?」


「…えっと、黒?」


マクラでバシバシと千晃(ちあき)を叩く。


「なっ!?恵菜(えな)!?」


「白のニットワンピだよ!バカ!」


わけがわからないと目をしかめる千晃(ちあき)。その顔が余計に私をイライラさせる。


千晃(ちあき)は私のこと好きなの!?」


「は?」


「なんで私と付き合ってるの!?したい時にできるから!?都合がいいから!?」


「なんでそうなるーー」


「だって私に興味ないじゃん!私がブスだから一緒に出かけたくないんでしょ!?友達や先輩にも会わせたくないんでしょ!?」


「そんなこと言ってないし」


「だから今日は頑張ったのに。少しでも可愛くなるようにメイクも服も気合い入れて、履き慣れないブーツ履いたのに、千晃(ちあき)いないし。1時間も待たされるし」


付き合って3ヶ月経つけど今まで不満を言えなかった。千晃(ちあき)は私が面倒くさがりでズボラなのを悪く言わない。気にしていないのか我慢しているのかわからないけど、笑って許してくれる。だから私も物分かりのいい彼女でいたかった。ケンカして嫌われちゃうのが怖いから。
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