コイワズライ
『レモンティーがお好き?』…独占欲つよつよ男子×鈍感小柄女子

10歳の時にこの街を離れて隣の県に引っ越した。そして現在、高校入学のタイミングで5年ぶりにこの街に戻ってきた。
街の景色や匂いは5年前とほとんど変わらないはずなのに違う物みたいに見えるのは、私が成長したという証拠だろうか。


工藤(くどう)伊吹(いぶき)?」


入学式の翌日、なんとなく見覚えのある男子が隣の席に座っている。あの太い眉毛に三白眼はおそらく彼だ!と懐かしくておもわず声をかけたのだけど。当の本人は眉をしかめている。


「誰?」


(そりゃそうだよね~5年ぶりだもん。わかんないよね)


新奈(にいな)新奈(にいな)じゃない?」


伊吹(いぶき)の前に座っている目がクリクリの男子に名前を呼ばれた。


(えーっと誰?)


今度は私がわからない。


吉野(よしの)千晃(ちあき)。覚えてる?」


千晃(ちあき)!?うそー!?大きくなったね!」


すっかりイケメンに成長した千晃(ちあき)に再会して嬉しくなった私はキャッキャッと喜んでいた。


新奈(にいな)?マジで!?あの、新奈(にいな)?」


まだ眉をしかめ、私を指差しながら目を瞬かせている伊吹(いぶき)


伊吹(いぶき)だよね!?私のこと思い出してくれた!?」


「思い出すもなにも全然違うじゃん!」


「だって5年ぶりだもん。そりゃ変わるよ」


「いやいや変わりすぎだろ!ちんちくりんだったのに、こんなに可愛くなっ…」


「え?可愛くなった?本当?」


「っ、なってねぇし!」


「さっき可愛くなったって言ったのに」


「言ってねぇよ!やっぱお前変わってねぇな。ウザいちんちくりんのままだわ」


「酷い!千晃(ちあき)~コイツ中身小学生だ~」


「あはは、伊吹(いぶき)は四歳児だよ」


「お前が一番酷いわ!」


5年前、近所に住んでいた私たちはよく一緒に遊んでた。遊んでたというより私が伊吹(いぶき)に引っ付いててそこに千晃(ちあき)が加わる感じ。
伊吹(いぶき)と一緒にいるとなぜか安心できた。伊吹(いぶき)の方は私につきまとわれて鬱陶しそうにしていたけど。


だから引っ越す時は本当に悲しくて寂しくて大泣きした。さすがの伊吹(いぶき)もその時は目がうるうるしてて、泣くなって私の頭を撫でて宥めてくれた。千晃(ちあき)は別れ際に花を摘んできてくれた。
離れ離れになっても友達だよって言ってくれて嬉しくて、引っ越してすぐに2人に手紙を書いたのに返事はなし。それから何度か手紙を書いたのに2人とも一度も返事をくれなかった。
私のことなんかすっかり忘れていると思っていたから、またこうして2人に再会できてバカなことを言い合えるのが本当に嬉しい。この高校を受験してよかった。
< 53 / 64 >

この作品をシェア

pagetop